在庫管理システムの要件定義と見積

在庫管理システムの導入で業務効率化!

監修者・安達奨

安達 奨(Susumu Adachi)

ITコンサルタント/Knowledge marketing合同会社 代表

IT業界で15年以上の経験を持ち、システム開発の上流工程から下流工程に至るまで幅広く精通。(企画、要件定義、設計、プログラミング、テスト)
現在ではシステム開発のみならず、ツール選定、ベンダー選定など、大手~中小企業向けのIT支援を多数手がける。
本サービスでは、特に事業会社時代から "システム開発会社の見積" に疑問を感じており、これを是正すべきと考え監修を行っている。

はじめに:在庫管理は業務の心臓部

製造業、小売業、ECサイト、倉庫業など、在庫管理は多くの業態にとって中核業務です。 システム開発を検討する中で、「在庫管理機能をどこまで作り込むべきか」「コストはどの程度かかるのか」は非常に重要なテーマです。

この記事では、**「フロント画面が既に完成している前提」**で、在庫管理機能の見積に必要な内容を以下の観点から詳細に解説します。

  • 機能一覧
  • 各機能の要件
  • 大まかなシステム設計
  • 開発にかかる工数とその根拠

第1章:在庫管理に必要な基本機能一覧

在庫管理システムにおける機能は、シンプルな構成から複雑な連携系まで様々ですが、一般的な構成を以下に示します。

カテゴリ 主な機能
在庫マスタ管理 商品情報登録/在庫単位の管理
在庫数更新 入庫/出庫/棚卸処理
在庫参照 現在庫照会/履歴検索/フィルタリング
警告・アラート 最小在庫数の下回り通知/過剰在庫の通知
履歴管理 入出庫の履歴管理/CSVエクスポート
ロール管理(管理者用) 編集/削除の権限付与/ログ記録

これらは全体像であり、業種や業務フローに応じてカスタマイズが必要です。

第2章:各機能の要件定義(例とポイント)

以下では、各機能をより具体的に要件として落とし込んでいきます。

2-1. 在庫マスタ管理

  • 登録内容:商品名、SKU、カテゴリ、在庫単位、保管場所、最小在庫数
  • 要件ポイント: 一意制約を設ける(SKUなど)、 論理削除(削除しても履歴保持)
  • 一意制約を設ける(SKUなど)
  • 論理削除(削除しても履歴保持)

2-2. 入庫・出庫処理

  • 登録内容: 入出庫日、処理区分(入庫・出庫)、数量、理由、操作ユーザー
  • 入出庫日、処理区分(入庫・出庫)、数量、理由、操作ユーザー
  • 要件ポイント: 出庫時は在庫数以下の操作しかできないように制御 トランザクション処理が必要(在庫数の整合性保持)
  • 出庫時は在庫数以下の操作しかできないように制御
  • トランザクション処理が必要(在庫数の整合性保持)

2-3. 棚卸処理

  • 目的:実在庫とシステム上の在庫差異の把握
  • 要件ポイント: 棚卸対象の選定(全品・指定倉庫・カテゴリ別) 棚卸差異の履歴保存と調整処理記録
  • 棚卸対象の選定(全品・指定倉庫・カテゴリ別)
  • 棚卸差異の履歴保存と調整処理記録

2-4. アラート通知機能

  • トリガー条件:最小在庫数を下回る/指定数量を超過
  • 通知手段:画面上のバナー表示/メール送信(オプション)
  • 要件ポイント: 管理者/担当者ごとに通知設定を切り替え可能に
  • 管理者/担当者ごとに通知設定を切り替え可能に

第3章:大まかなシステム設計の考え方

在庫管理機能単体のシステム設計を考える場合、以下のようなレイヤ構造が一般的です。

3-1. データベース構成(例)

テーブル名 主なカラム
products id, name, sku, category, unit
stock_histories id, product_id, type, quantity, user_id, created_at
stock_levels product_id, quantity, location_id
locations id, name
users id, name, role, email

3-2. API設計(RESTベース例)

  • GET /api/stocks:在庫一覧の取得(フィルタあり)
  • POST /api/stocks/increase:入庫処理
  • POST /api/stocks/decrease:出庫処理
  • POST /api/stocks/adjust:棚卸処理
  • GET /api/alerts:在庫アラートの取得

3-3. バリデーションと整合性管理

  • 在庫更新は必ずトランザクション処理で行うこと
  • フロント画面側にもバリデーションを持たせつつ、バックエンドでも二重に制御

第4章:開発工数の見積(人日単位)

在庫管理機能の開発にかかる人日をざっくりと見積もると以下のようになります。 ※画面は完成している前提、バックエンド/API設計・実装が対象です。

機能 工数(人日) 備考
在庫マスタ登録 3日 CRUD、検索、バリデーション含む
入庫/出庫処理 5日 ロジック、トランザクション、履歴記録含む
棚卸処理 4日 差分調整処理、履歴管理含む
アラート通知 3日 通知条件設定、バナー表示、API
履歴参照・CSV出力 3日 検索条件・ページング・CSVダウンロード処理
API設計/共通バリデーション 3日 共通モジュール含む
単体テスト/結合試験 3日 テストコード作成、異常系確認など

合計:約24人日(約5人月で納品可能な規模)

補足:費用換算例

  • 単価60,000円/人日の場合:約144万円
  • 単価80,000円/人日の場合:約192万円

第5章:拡張性・外部連携を見据えた発注のポイント

初期開発段階では、「入出庫・棚卸」といった基本機能にとどめる企業も多いですが、将来的に以下のような機能追加を検討する場合もあります。

  • WMSやECシステムとの連携(API)
  • RFID・QRコード読み取りとの連動
  • 複数拠点・物流倉庫への対応
  • ロールベースの承認ワークフロー

そのため、発注時には以下を意識するとよいでしょう。

  • スキーマを将来的に拡張可能にしておく
  • REST APIにて処理を疎結合に設計する
  • WMSやECなど外部連携の前提を盛り込んでおく

※WMS:Warehouse Management System(倉庫管理システム)の略。在庫管理システムと

おわりに:シンプルな在庫管理こそ要件定義が肝

在庫管理は一見シンプルに見えますが、少しの仕様変更や業務ルールの違いで大きく要件が変わります。 本記事で示したような「要件の明確化」と「大まかな工数の把握」は、無駄な開発費を抑え、必要十分な機能を実装するための第一歩です。

見積時には、どこまで自動化するか・どの業務を対象とするかを丁寧にすり合わせましょう。

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