大手SIerとシステム開発会社の違いとは?

失敗しない発注先の選び方

監修者・安達奨

安達 奨(Susumu Adachi)

ITコンサルタント/Knowledge marketing合同会社 代表

IT業界で15年以上の経験を持ち、システム開発の上流工程から下流工程に至るまで幅広く精通。(企画、要件定義、設計、プログラミング、テスト)
現在ではシステム開発のみならず、ツール選定、ベンダー選定など、大手~中小企業向けのIT支援を多数手がける。
本サービスでは、特に事業会社時代から "システム開発会社の見積" に疑問を感じており、これを是正すべきと考え監修を行っている。

はじめに:なぜこの違いを理解すべきか

システム開発を外注しようと考えたとき、特に大手の事業会社によくあるのが「大手SIerに頼むべきか、それとも中小のシステム開発会社か?」という選択です。

本質的には同じシステム開発会社ではあるものの、両者には明確な違いがあり、費用感・体制・得意領域・対応スキルなどを誤解して選んでしまうと、思わぬ損失やトラブルに繋がることもあります。そのため、システム開発会社の定義をプログラミングまで実施する会社、大手SIerを設計や進捗管理をメインにする会社として以降の話を進めていきます。

結論:最適なのは「システム開発会社への直接発注」だがスキルが求められる

大前提として、システムはプログラムを書かなければ動きません。

その点で言うと、大手SIerはピラミッド型の多重下請け構造を採用しており、実際にプログラムを書くのはその下層にいるシステム開発会社です。だからこそ、発注者が直接そのシステム開発会社と契約すれば、同等の品質をより安価に得ることが可能になる上、仕様の認識齟齬などが発生するリスクも減ります。

その様な図式であるにも関わらず、何故SIerに依頼をしてしまうのか?その答えは"設計"と"人材の調達"の2つがあります。

システム開発会社は「要件定義」や「全体の設計」といった上流工程を苦手であったり、自社で使えるリソースがそれほど多い訳ではありません。更に、提案力なども事例の多さから大手SIerに見劣りすることもあると思います。

しかし、発注者がそれなりの知識を身に着け、事前に準備をすれば効率的に開発をしてもらうことが出来るため、上記の様な結論があります。より理解を深めていただくために、根本的な部分をみていきましょう。

1. 大手SIerとは?特徴と役割を解説

1-1. 大手SIerの基本的な立ち位置

大手SIer(システムインテグレーター)は、主に以下の役割を担います:

  • クライアント企業との折衝(営業・要件ヒアリング)
  • システム構成・アーキテクチャ設計(基本設計)
  • プロジェクトマネジメント(進捗管理、予算管理)
  • 人材調達(自社以外からもエンジニアを確保)
  • 最終的な責任の引き受け

ただし、実際の開発(プログラミング)はほぼ外注一択で、自社に開発スキルがない場合も多く見受けられます。

1-2. 大手SIerの開発体制と費用相場

  • PM(プロジェクトマネージャー):営業寄り。現場状況を詳細に把握していないケースも多い。<br>→単価としては300~400万円ほどにもなる。
  • PL(プロジェクトリーダー):基本設計、進捗管理、課題解決を担当。<br>→単価としては250~300万円ほどが一般的。
  • 開発実務:外注先のエンジニアが担当。<br>→SIerがクライアントに請求する金額は200万円前後。開発会社側が受け取る金額は120万円前後が多い。

こうしてみていただければ分かると思いますが、大手SIerの実態は限りなくマージンビジネスと言って差し支えないものでしょう。ITコンサルタントの立場でクライアントの支援をさせていただいていると、私が要件定義・設計・プログラミングまで出来るため、PJの途中からいつも開発メンバー以外が不要になることが多々あります。

SIerを挟むことで開発着手までのリードタイムは伸びる一方ですし、正直なところ何故依頼してしまうのか理解に苦しむところがあります。

 1-3. 海外にはそもそもSIerがいない?

疑問に思われるかもしれませんが、海外ではSIerという図式をとっている会社がほとんどいません。(本記事でいう「システム開発会社」はもちろんいます)

その理由として、そもそも海外の事業会社はシステム開発をほぼ内製で行う傾向にあるからです。これは、情報流出をしないようにするために重要な話ですし、それだけ事業を行う上でシステムが重要なものであると理解し、要件から自社で作りこむのを当たり前だと感じているからでしょう。

もちろん、人が足りない場合には設計関係であればコンサルタントに委託、プログラミングの領域であればシステム開発会社やフリーランスに依頼をしています。こうした図式をとることでコスト削減にも繋がる上、システムがブラックボックスにならないなどメリットしかありません。

これに対し、日本ではSIerへの発注を前提に考えている企業が多くあります。こうした考え方をしているからこそ要件定義の甘さに繋がってしまい、結果PJが失敗に終わってしまうなどの弊害も起きていることは十分認識しておくようにしましょう。

 

2. システム開発会社とは?特徴と実力を再評価する

2-1. システム開発会社の強み

  • 基本設計〜詳細設計、実装(プログラミング)を自社で行える
  • 特定技術領域(Web、アプリ、業務システム)に特化しているケースも多い
  • 開発リソースは柔軟に調整できるようになってきた(自社→フリーランス・SES連携)

特に、近年では高スキルなフリーランスを活用し、体制強化に成功している企業も増加しており、大規模プロジェクトを単独で回せるシステム開発会社も珍しくありません。

2-2. システム開発会社の費用相場

  • PL/PMクラス:基本設計、進捗管理、課題解決を担当するが、元々がプログラマーとなりますのでもちろん開発にも入ります。<br>→単価としては月額150万〜200万円が相場
  • 開発実務:自社のエンジニアが担当。(リソースが足りない場合に他社やフリーランスも使います)<br>→単価としては、SIerから受託しているときと変わらず120万円前後が多い。

これをみていただければ分かると思いますが、開発会社と直接契約することで大手SIerに発注するのと比べ20〜50%もコスト削減出来る計算になります。

2-3. システム開発会社の弱み・課題

  • 上流工程(要件定義、業務分析)は不得意な場合が多い
  • 発注者が要件定義をしない「丸投げ案件」は対応できないことが多い(その場合にはコンサルタントなどにちゃんと要件定義をしてもらいましょう)
  • コミュニケーションやドキュメント品質にばらつきがある

つまり、発注者側が要件を整理できていない場合、思った通りの成果物が得られない可能性もあるため注意が必要です。

 

3. 費用と品質、どちらを優先するか?判断のポイント

比較項目 大手SIer システム開発会社
費用相場 高い(200万〜/人月) 普通(120万前後/人月)
※フリーランスでも同等の金額になることも増えたため。
プロジェクト責任 最終責任あり 契約条件により異なる
※直接契約の場合には最終責任あり
リソース調達力 強い(全国規模) 中規模(特定領域に強い)
要件整理支援 普通(この手の話ではコンサルタントの方が圧倒的に上) 弱い(要件定義は不得手)
実装力 外注依存 自社内開発が中心
柔軟な対応力 標準プロセス重視 アジャイルなど柔軟対応可能

この比較からも分かる通り、「要件定義済みで、コストを抑えて開発したい」場合にはシステム開発会社が最適です。一方、「業務全体のIT化を任せたい」「リスクを丸ごと委託したい」場合は、大手SIerが安全な選択肢となります。

 

4. システム開発会社へ発注する際に気をつけるべきこと

4-1. 要件定義の準備を怠らない

開発会社に「こんなものを作りたい」と丸投げするのは失敗のもとです。以下のような情報を事前に整理しましょう:

  • 目的・背景
  • 実現したい業務プロセス
  • 必須機能(Must)と希望機能(Want)
  • 操作フローや画面イメージ

可能であれば、PoC(概念実証)やMVP(最小機能製品)で試験的に開発してから本格開発に進むのがベストです。

4-2. 体制・スキルセットの確認

特に注意したいのは以下の点です:

  • リーダーエンジニアのスキルと経験年数
  • チーム構成(何人で、どう分担するか)
  • 過去の実績(同業界の開発経験)

「営業担当の印象」だけで選ばず、実際の技術チームとの事前ミーティングを推奨します。

 

5. 最適なパートナー選定のためのチェックリスト

システム開発のパートナー選びで失敗しないために、以下のチェックリストを活用してください。

  • &nbsp;自社の要件が整理できている
  • 過去の実績(同業種、同技術)を確認した
  • チームリーダーとの面談を行った
  • 開発体制や進捗管理の仕組みを確認した
  • 費用の内訳(人月単価×期間)を明確に提示された
  • コミュニケーション方法と対応スピードに納得している

 

おわりに:発注側も「勉強」が必要な時代に

システム開発の世界では、「高ければ安心」「大手だから大丈夫」という時代は終わりを迎えつつあります。  むしろ、コストを抑えつつ高品質な開発を行うためには、発注者が一定の知識を持ち、自ら主体的にプロジェクトに関わる必要があるのです。

その第一歩が、「大手SIer」と「開発会社」の違いを正しく理解すること。 この記事が、貴社のパートナー選定と開発成功への一助となれば幸いです。

 

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