フロントエンドエンジニアの仕事とは？【発注者・初心者向け】
役割・業務範囲・相場単価まで徹底解説
目次
安達 奨（Susumu Adachi）
ITコンサルタント／Knowledge marketing合同会社 代表
IT業界で15年以上の経験を持ち、システム開発の上流工程から下流工程に至るまで幅広く精通。（企画、要件定義、設計、プログラミング、テスト）
現在ではシステム開発のみならず、ツール選定、ベンダー選定など、大手～中小企業向けのIT支援を多数手がける。
本サービスでは、特に事業会社時代から "システム開発会社の見積"
に疑問を感じており、これを是正すべきと考え監修を行っている。
近年、Web制作・システム開発の業界では「フロントエンドエンジニア」という職種が注目されています。しかし、具体的に何をする人なのか、Webデザイナーやバックエンドエンジニアとの違いはどこにあるのか、よく分からないという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、フロントエンドエンジニアの役割から、主な業務内容、単価の相場、依頼時の注意点まで、幅広く解説していきます。
発注を検討している企業の方や、これからフロントエンドエンジニアを目指す方にとって指針となれば幸いです。
1. フロントエンドエンジニアとは？役割の全体像
フロントエンドエンジニアとは、Webサイトにおける「ユーザーが直接操作する部分（UI/UX）」を開発する技術者のことです。つまり、デザイナーが描いた「設計図（デザインカンプなど）」を、実際の「動くページ（HTML/CSS、JavaScript）」として作るのがフロントエンドエンジニアの仕事です。
<担当する領域>
そのため、フロントエンドエンジニアには以下のアウトプットを求められます。
- ブラウザ上で表示されるページ（HTML/CSS）
- バックエンドエンジニアが作成したAPIの呼び出し（JavaScript）
- アニメーションなどの実装（HTML/CSS /JavaScriptなどの組み合わせ）
<Webデザイナーとの違い>
| 役割 | Webデザイナー | フロントエンドエンジニア |
|---|---|---|
| 主な作業 | 見た目・レイアウト設計 | 表示・動作・機能の実装 |
| 使用技術 | Adobe XD、Figma、Photoshopなど | コーディング（HTML/CSS、JavaScriptなど） |
| 成果物 | デザインカンプ・画像素材 | 実際に動くWebページ |
2000～2010年くらいまでのシステム開発現場では単に「フロント開発」と呼ばれ、バックエンドエンジニア（当時はサーバーサイドエンジニアと呼ばれていました。）の単価に比べると安価な作業として見積されていました。
しかし、UI/UXが売上に直結する（商品の魅力を最大限アピールする）ということもあり、クライアントからフロント開発に対するニーズが激増します。（※それにも関わらず、大手SIerはフロント開発を苦手としたままで、度々トラブルになっていたのは別の話ですが）
そこで、フロント開発の現場ではこれまでありがちであった「HTML/CSSだけを作って納品する」スタイルから「JavaScriptでSPAやアニメーションなども作り、認識のずれが起きないようにする」といった具合に、作業範囲をより広げる流れにシフトしていきます。
とは言え、フロント部分もプログラムの一端ではあるため、それによってバックエンド側で取り込みし辛い・最悪のケースでは丸ごと修正するなどの問題も起きていました。だからこそ、多少なりともバックエンドの知識も身に着けた上で、APIをコールするところまではフロント側で実装する「フロントエンド」のスタイルへと現代では変化しています。
もちろん、こうした変化はニーズだけの話ではなく、AWSなどPaaSの登場によってサーバー構築しやすくなったこと、ReactやVueなどのフロントエンド開発専用のJavaScriptライブラリの登場（その前はjQuery）などの要因もあることでしょう。ただ、そういった事情よりも「売上に直結するシステム開発」に重きが置かれ始めたからこそ、「フロントエンド開発」が今これほど盛んに行われていると感じます。
2. 主な業務内容
既にお話はしていますが、フロントエンドエンジニアが実際に行う業務としては、以下があります。
(1)HTML/CSSコーディング
- Webページの基本的な構造をHTMLで記述
- レイアウトや色、フォントなどの装飾をCSSで制御
- モバイル・PC対応を意識したレスポンシブデザイン
(2)JavaScriptによる動作の追加
- ドロップダウンメニューやモーダルウィンドウの動作
- 入力フォームのリアルタイムバリデーション（例：パスワード確認、メールアドレスのフォーマットチェックなど）
- スライドショーやタブ切り替えなどのUIパーツ制御
(3)APIとの連携（バックエンドとの橋渡し）
- サーバーからデータを取得して表示（例：商品情報の表示、予約情報の表示など）
- ユーザーの入力情報をサーバーへ送信（例：会員登録、ログインなど）
(4)バージョン管理・デプロイ（リリース作業）
- Gitでのバージョン管理、CI/CDの簡易運用（インフラエンジニアやバックエンドエンジニアなどが担当することの方が多い）
上記の業務を遂行する上で今や切っても切り離せないのがReact、Vue.js、AngularなどのJavaScriptライブラリやTypeScriptと呼ばれるプログラミング言語です。これに加え、HTML/CSSの実装を楽にするBootstrapやTailwind CSSなどのCSSフレームワークも合わせて使用するケースが多くあります。（2025年現在の主流で言えばReact×Tailwindが一般的です。）
3. フロントエンド業務の相場単価一覧
フロントエンドの重要性をお話してきましたが、それだけのニーズがある今、単価は年々上がる一方です。もちろん、作業の内容によって幅はありますが、以下に主な業務と単価の目安を一覧にまとめました。
| 業務内容 | 単価目安 | 備考 |
|---|---|---|
| HTML/CSSコーディング | 5～10万円/1ページ | 静的ページ。内容とデザインの複雑度による。複雑なLPなどは1ページで100万円を超える。 |
| レスポンシブ対応 | PC対応の単価＋30%〜50% | モバイル・タブレット最適化を追加する場合 |
| React/Vue開発（小規模） | 10万〜80万円 | シームレスなSPA（リロードが発生しない1ページ完結型の作り）※料金シミュレーションなどで良く使用されているもの |
| React/Vue開発（中〜長期的な開発が必要なケース） | 80万〜150万円/月額 | BtoC向けの画面、クライアントに向けた管理画面など |
| テストコード実装（Jest等） | 3万〜20万円 | 品質保証の一環として導入するケース |
| CMSテンプレート組み込み（WordPress） | 5万〜30万円 | テーマ自体のカスタマイズなども含む |
※単価はフリーランスや小規模事業者の目安です。大手制作会社ではこれより2〜3倍の価格になることもあります。
発注側における注意点としては、そもそもフロントエンドエンジニアは必ずしも必要ではありません。その理由として、デザインが完璧に出来ているなら、HTML/CSS～バックエンド開発まで一気通貫で行うことが出来るエンジニア（※1）も多数いるため、そういったエンジニアであれば、バックエンドとの繋ぎこみでトラブルが起きることもありません。
※1. 近年フルスタックエンジニアと呼ばれますが、インフラまで含む必要があると思うので間違っています。そもそも論ですが、「エンジニア」ではなく「プログラマー」が適切な表現です。
4. 単価が上下する要素とは？
フロントエンドの案件で価格に差が出る理由は、以下のような要素が関係しています。
4-1. 技術レベルと経験
- トレンド技術（ReactやTypeScriptなど）を使いこなせるか
- デザイン再現の精度や、パフォーマンスチューニングの知識
- UI/UXの理解やユーザー視点での実装力
4-2. プロジェクト規模
- ページ数が多い、機能が複雑な場合は人月単価ベースで動く
- 工数計算がされやすく、詳細見積もりになる
4-3. フルスタック対応可否
フロントだけでなく、バックエンドやサーバーサイドも対応できるエンジニアは重宝され、相場も上がります。
4-4. コミュニケーション能力
- フリーランスの場合、要件の確認・報告・修正対応の速さは評価される
- 非エンジニアでも分かりやすい説明ができる人は指名されやすい
5. 制作会社 vs フリーランス：依頼先の違いと選び方
| 観点 | 制作会社 | フリーランス |
|---|---|---|
| 費用 | 高め（数十万〜数百万円） | 安め（10万〜数十万円） |
| 安定性 | チーム体制・進行管理あり | 個人の責任による |
| 技術力 | 専門分野に特化した人材が多い※ただし、制作会社もフリーランスを良く利用しています | 技術はピンキリ、ポートフォリオで確認しても、最近はサンプルコードなども多くあてにならない。 |
| スピード | 担当者が複数経由するためやや遅め | 柔軟に動けるケースが多い |
| 保守性 | 長期運用・保守プランあり | 案件単位、スポット依頼が基本 |
小規模なLPやキャンペーンサイトならフリーランス、大規模開発や長期運用が前提なら制作会社がおすすめです。もちろん、自社である程度できる前提であれば、フリーランスを使って中長期的にプロジェクトを回していくやり方が一番安価に済みます。
6. フロントエンドエンジニアへの依頼時に押さえるポイント
6-1.明確な要件定義
- ページ数、各ページの機能（モーダル・タブ切替など）
- APIの有無、どこまでの対応範囲か（画面のみ or データ連携まで）
6-2.納期と修正範囲の明示
- 修正対応の回数と内容（軽微 or 構造変更）を事前に確認
- テスト環境、納品形式（zip、GitHubなど）の指定
6-3.UI・デザインの有無
- デザインも含めて依頼するのか、カンプ支給なのか明確に
- Figmaなどで支給する場合はデザインの粒度も伝える
まとめ：フロントエンドはWeb開発の「見せ場」であり「心臓部」
フロントエンドエンジニアは、ユーザーの体験を直接的に左右する非常に重要な存在です。単に「ページを組む人」ではなく、技術力・設計力・柔軟な思考力を駆使してWebの品質を支えています。
依頼する際は、予算だけでなく以下の点も見極めましょう。
- 使用する技術（例：React/Vueの有無）
- コミュニケーション力・納期対応力
- UI/UXの理解度
正しい知識を持ち、適切な人材と出会えれば、Web制作は大きな成功を収めることができます。